さいころ亭オリジナルワールド
『ザウゼリアリコシェ』 特殊設定編冒険都市フォード |
「ふぅぅ〜ん…あぁぁ〜」
歩きながらフォールは、大きなあくびと共に体を大きく伸ばした。「この七日間は忙しかったもんな…」
初夏の風に、赤茶色の髪の毛が踊る。空は抜けるような青空だ。
こんな日は、日当たりの良い丘の上で昼寝でもしていたいなぁ。そんなことを思う。フォールが冒険者になろうと決心して、この都市に来てから七日が過ぎていた。ドラゴニアのヴォルフに誘われ、冒険者ギルドに加入する事にしたのだが、それには少しだけお金がかかるらしいと言うことが分かったが、その時のフォールの所持金は、宿を取るのが精一杯で他のことに使う余裕はどこにもなかった。そんな彼を見かねてか『銀の乙女』亭の主人がフォールは使用人として雇ってくれたのだ。「どうしたの?」
六日間がんばって働き、お金が貯まったので、今日やっと冒険者ギルドへ登録しに行こうと思っていた。
その道中、道の隅っこできょろきょろしている人を見つけた。同じ店で働いているフラニーだ。あんなところで何やっているんだろう? 不思議に思いながらフォールは、向こうを向いている彼女に近づいた。フォールが声をかけると、フラニーは左右を見回し、さっとこちらを振り返った。そしてフォールの姿を認めると、にっこりと笑って挨拶した。「お〜、フォールぅ。おはようなのら」
「おはよう」フォールも挨拶を返す。フラニーは「ちょっと待って」と言うと、中腰になりキョロキョロと辺りを見回す。「なにか無くしたの?」
…なにやってんのかな…。そんなコトを考えながらフォールは彼女に近づいて話しかける。フラニーはそのままの姿勢で、フォールの問いに答える。「うん、イヌをね。さっきここで見つけたの。お腹が空いているみたいだったから、パンを買ってきたんだけど…あっ、みっけたぁ!」フラニーは、イヌの姿を見つけると走っていく。そしてそのイヌをゆっくり抱きかかえると、頬ずりする。「良かったね、見つかって」
「うん」
「フラニーってイヌが好きなんだ?」
「うん」フォールの問いに、フラニーは嬉しそうに笑って答える。そして、ちょっと悲しそうな顔をして続けた。「この街…フォードじゃ、足もとのイヌの事なんて誰も気にしないの。みんな自分のことだけで…」
「………」
「この街にいる人はほとんど冒険者だからね。みんな忙しいもんねぇ〜」フォールに…というよりは、イヌに話しかける。話しかけながら頬をすりつけられたイヌは、フラニーの鼻をペロッとなめて応える。「………」フォールはじっとフラニーの話を聞いていた。彼女はフォールの方を見ると「やぁ〜もぉ…、そんなにしんみりしないでよぉ。辛気くさいのら」と笑いながら言う。フラニーの人懐こい笑顔につられて、フォールもクスッと笑う。「でも、誤解しないでね。フラニーはこの街が好きなのら」
彼に笑顔が戻ったのを確認すると、フラニーは話を続けた。彼女はしゃべりながら、その場にしゃがみ込んで、イヌにパンをやっている。「石造りの家もそこに住んでいる人も、最初は冷たい感じがして嫌だったけど、そんなに冷たい人ばかりじゃないって分かったし。ヴォルフとかね。それに、この街にいたから、フォールとも会えたのら」フォールはにっこりと…少し恥ずかしそうに、笑ってフラニーに問いかける。「フラニーはこの街に来て長いの?」フラニーには、フォールの質問は照れ隠しのためだと言うことがすぐに分かったが「う〜ん…3年くらいかなぁ…」と、ちょっと考えてから嬉しそうに答える。自分の事を訊ねてくれたのが嬉しかったのだ。「そ〜いえば、フォールはこんな所でなにやてるの?」
イヌは尻尾を振りながらパンを食べていた。その様子をしばらく二人で眺めていると、ふと気がついたように今度はフラニーが問いかけた。
「冒険者ギルドに行こうと思うんだけど…」フォールの答えに、フラニーはまたも嬉しそうな顔をする。「じゃあ、お金貯まったのね?」
「うん」
「オッケイ〜! フラニーがギルドの登録所まで案内して上げるよ。そ〜いえば、フォールってこの街の中を歩き回った事って無いよね?」
「う、うん…」なにが『オッケイ』なのかは知らないが、とりあえずうなずく。彼がうなずくのを見ると、フラニーは片手にイヌを抱き、もう片方の手でフォールの手を取り走り出す。「あ、ちょっと…」フォールはびっくりして声を上げる。フラニーは走りながら答える。「ついでにこの街を案内して上げるのらぁ!」
2人と1匹は、初夏の冒険都市フォードのメインストリートを走っていった。
『冒険都市フォード』は、ラフェイン平原とドラゴニアの聖地ブレナ山脈との中間点に位置する独立都市です。この都市には冒険者ギルドというものがあり、都市全体がそれを中心に動いています。ギルドがあるので冒険者が集まり、冒険者が集まるので仕事が集まり、仕事がたくさん集まるのでギルドが運営できるのです。もちろん、冒険者目当ての証人なども集まってきます。『冒険者ギルド』なくしてこの都市は語れないのです。
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2人はメインストリートを外れて小径に入り、その先にある丘を駆け上がった。「ほら、フォールぅ! みてみて、あれが大灯台よ!」フラニーは灯台を指さして、フォールの方を振り返った。が、当のフォールは両手を膝につけ、肩で大きく息をしている。「だいじょうぶ?」
「ハアハア…、だ…大丈…夫…」フォールはフラニーにこう告げると、さっきフラニーが指さした方向に顔を向ける。すると大きな灯台が目にとびこんできた。とても大きく、高い灯台だ。もちろん街の中からも見えたが、全体を見たのは初めてだった。しかも、灯台だけでなく、この丘の上からは冒険都市フォードが一目で見渡せる。広い平地に一本の街道が通っているのが見える。その街道を遮るように冒険都市は広がっていた。海の青と、空の蒼と、緑の平原と、灰色のフォードというコントラストが美しく映える。フォードという街をこういう視線で見たのも初めてだ。その灰色に輝く街を見て、フォールはポツリと呟いた。「街の中にいるときは、とっても大きく感じるのに…」そのつぶやきを聞いたフラニーは、フォールにこう言った。「実際に見ると小さいのら」声をかけられて、フォールは彼女の方を向く。「あの街で嫌なことがあったら、ここに来ると良いのら。こっからあの小さいフォードを見てると、嫌なことも小さく見えるの」フラニーはフォールの方を向くとニコっと笑う。
フォールも笑い返すと、大きく頷いた。
ラフェイン平原の南方に位置するこの都市は、一年中暖かく、湿度が高いのが特徴です。そのため、都市にある家のほとんどが石造りの家で、木造の家は珍しい存在となっています。都市の中央には大きな灯台がそびえ立ち、街のどの場所からもその大灯台が目に入ります。この灯台は『フォードの大灯台』と呼ばれており、内部には冒険者ギルドの本部があります。
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